天使は唄う

その直後に神から地獄界へ行くように言われた。

——地獄界
此処には“裁きの間”と呼ばれる空間で神により裁かれた者達が居る。
蠢き、血に飢えたならず者ばかりだ。
その奥に牢がある。
それに繋がれた罪人。
鎖は白く不気味に光った。
冥府の鎖というものだ。。
狼の耳にユニコーンの角を持つ男。
その者が鎖を引きずると地面は重みで抉れる。
冥府の鎖は罪人の重さを表す。
その重さが彼の大罪を主張している。
傍にはアラミスが居る。
彼女はその男を監視する。
地獄に投獄された罪人“サタン”
その男だ。
神が言うにはアラミスに問題が起こったらしい。
「アラミス。」
キャロルが呼ぶ。
「キャロルさん！」
アラミスと呼ばれた天使が悲鳴のような声を上げる。
彼女の役割は地獄へ行くために天使であるが、実質は女神の役割を果たしていた。
地獄界にいる天使に指示を出している。
「サタンがどうかしたのか？」
「俺は何もしていない。」
キャロルの問いに傍に居た男が答える。
彼がサタンであることは前記の通りだ。
「アスモデウスとレヴィアタンがまた問題を起こしているようなのです。」
アラミスは困った顔でいる。
「それなら此処に居る騎士天使に任せればいいだろう。」
騎士天使とはあらゆる世界を行き来し、均衡から外れたものを排除する天使だ。
「貴方も騎士でしょう？」
「私は帰還天使に過ぎない。」
帰還天使とは騎士天使の１つ下だ。
魂を神へ還す役割をしている。
「そんなこと言って。実力はわかっているのですよ？」
「それでも、騎士になる資格は無い。」
キャロルは言う。
「貴方の自虐に付き合っている暇はありません！とにかく、あの罪人達を神の所へ還してください。」
「承知した。」
膨れっ面をするアラミスにキャロルは言い返すことをやめた。

地獄界を巡回すると、アスモデウスとレヴィアタンを見つけた。
しかし、レヴィアタンは何処かへ行ってしまった。
「アスモデウス。」
「はいは〜い！」
呼ばれた罪人は元気に返事をする。
「やっぱりきてくれたんだぁ〜！来ると思ってたよ。坊や。」
にっこりと笑う笑みは裏があると分かる笑い方だ。
「アンタをここへ連れてくる為に暴れたのだからね。」
「私に何の用だ。」
「ふふふっ」
武器を構えるキャロルにアスモデウスは不敵な笑みを浮かべた。
「アンタの美貌が妬ましいのよ。」