天使は唄う
「大天使でもないのに、この扱いとは。貴方はどういうつもりです?」
「彼——彼女はウリエル。そして、この器はミシェラだ。キャロルという男は死んだ。」
「ほう。では、空いていた席がようやく埋まったというわけですか。」
「そうだ。」
神は淡々と言う。
「少し、記憶を忘却させる。だが、何れは思い出す話だろう。その時はミカエル。汝が真実を教えよ。」
「仰せのままに。」
ミカエルは一礼した。

目覚めたキャロル——今はウリエルは立ち上がり、辺りを見回す。
覚えていることは何もない。
生前のミシェラの記憶だけだ。
キャロルのことは全て忘れていた。
そして、自分が4大天使のひとり、ウリエルであるということ。
だが、役目はわかっていた。
それを果たすだけだ。

彼女は神に跪く。
「我が父よ。」

彼女の有能さは直ぐに皆に知れ渡る。
ウリエルの名を知らぬ者は居なかった。
冷淡で美麗な天使。
神の兵士に相応しい姿と実力。

そして、長き月日が過ぎ去った。
キャロルのことをウリエルは思い出すことはない。

4大天使のうち、ウリエルを除いた3人と神のみぞ知る。
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