天使は唄う
「いつまで、自分を嫌うつもりだ。好きになれとは言わないが、そんな考えで何が救える。」
神の秘書、メタトロンの声。

「彼——彼女はウリエル。そして、この器はミシェラだ。キャロルという男は死んだ。」

神の言葉が聞こえた時に光が差した。

「ミシェラ。」
髭面の男が呼んだ。
「あぁ、ミカエル……」
消え入る声で呼ぶ。
不思議と痛みはない。
「随分と手酷くやられたな。」
「レヴィアタンとアスモデウスだ。」
「だろうな。」
返答と共に光が包む。
白い大きな翼に包まれ、彼女の身体の傷が癒えていく。
「これだけの損傷を与えられるとしたら、罪人以外考えられない。」

罪人とは、穢らわしい生き物。
罪深きもの。
少なくとも、天使にとっては忌むべきものである。

7人の大罪人は神に忠誠を誓い、長き償いを経て今に至る。

傲慢の大罪人ルシファー
嫉妬の大罪人レヴィアタン
憤怒の大罪人サタン
怠惰の大罪人ベルフェゴール
強欲の大罪人マンモン
暴食の大罪人ベルゼブブ
色欲の大罪人アスモデウス

七つの大罪を持つ者は許され、各々の役割を果たし、人間界を守っている。
それに加え、生を司る罪人“ゼロ”と死を司る罪人“タナトス”が居る。

ミカエルが言う通りに罪人はそれぞれ強大な力が備わっている。

だからこそ、神は罪人を“器”と“魂”に分けた。

罪人の半身とも言える肉体である器は地上へ

罪人自身は神の元へ

しかし、現在はレヴィアタンの魂が消失している。
それにより、地上へ器のみが罪人の役目も負って存在している。

襲いかかってきたのは器であるレヴィアタンと、アスモデウス。
「アスモデウスが何故此処へ来た?」
「知らない。」
癒えゆく身体を見遣り問うミカエルにウリエルが答える。
「……ミカエル。」
「どうした。」
やけに弱々しい声音に首を傾げる。
「私は、何者なのだ?」
キャロルという男
神が言った言葉
ウリエルは自身がミシェラでもウリエルでもないのではないかと疑問に感じた。
ミカエルはそれを察しているのか、そうでないのか答える。
「お前はウリエル。大天使だ。今の姿だと、ミシェラだが。」
「では、“キャロル”とかいう男は何者だ?」
「?」
「……夢で見た。聞こえた。我が父の言葉とその男の言葉が。」
ウリエルは身を起こし、問う。
「私は——」

『望みは何だ?』
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