天使は唄う
『家族が幸せであることです。』

「——!」
目を見開き、ミカエルを見る。
「キャロルの、生まれ変わり。」
「!」
今度はミカエルが目を見開いた。
やがて、落ち着いた表情で頷く。
「そうだ。」
そして、真実を告げる。
「お前はキャロルという名前の帰還天使だった。」
ウリエルは黙って話を聞いていた。
受け入れたくないわけではなく、かといって話を信じられるようでもなかった。
だが、ミカエルが言うならば本当の話だろう。
そう信頼していた。
それは、こうして救ってくれた恩からくるものかも知れない。

全ての真実を知ると、ウリエルは羽根を広げる。
未だ癒えきっていない羽根は脆く、崩れそうな危うさだ。
「過去がどうであれ、私がウリエルであることは変わらない。」
はっきりと言う。
「そうか。」
ミカエルはウリエルの頭を撫でる。
「何だ?いやに優しいな。ミカエルがそうするのは、およそ100年ぶりだ。」
「お前は俺にとって子供のようなものだからな。」
「兄の間違いだろう。」
ウリエルは言う。
「もう、平気だ。」
それは傷という意味合いか、動揺か。
何れにせよ、ウリエルは任務に戻るつもりだ。
「ウリエル。」
今度は天使の名前をミカエルは呼ぶ。
「俺は地上に暫くとどまることにしていた。お前も、そうしろ。」
「何故だ?」
「悪魔が動き始めたらしい。ラファエルとガブリエルが天界を守る。その間、俺とお前は地上を守れ。」
「父は何と」
「好きにしろと言っていた。」
ミカエルは答えた。
「ウリエルには行って欲しい場所がある。……俺はヴィトウィーンという富豪の嫡男として此処ではそれなりにやっていっている。困ったらヴィトウィーン家に来るといい。」
「いってほしい場所?」
ウリエルは眉を寄せる。
「あぁ。」
ミカエルはそう言うとウリエルと共に羽ばたいた。
「きっと、気に入る。」
そう言って微笑んだ気がした。
「???」
状況が解っていないウリエルをミカエルは容赦なく空から落とす。
「!!!」
未だ回復していない為、飛べずに落下する。
「馬鹿者!!」
一喝しながら落ちる。

天使は今日も神の為に戦う。

「……これが新たな使命。」

真っ直ぐと空を見上げる。

「我が父よ。」

静かに歩き始めた。
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