天使は唄う
少しの間、真顔だったがガブリエルも笑う。
「本当に、ウリエルは兄達が好きだな。」
「ふふっ。」
返事の代わりにウリエルは笑う。
心から、うれしいという笑顔に3人はお互いに言いたいことはあったがやめた。
彼女の前で兄弟喧嘩はやめよう。
少なくとも今は思った。
「ウリエルが呼べば我はいつでも来るからな。」
よしよしとウリエルを撫でてラファエルが言う。
「我が父の元に居ることが多いお前にそれができるものか。」
ミカエルが言うとラファエルが睨む。
因みに、ミカエルに悪意はない。
事実を言っていい時と悪い時が解っていないというところだろう。
「僕も、ウリエルが呼ぶなら出来るだけ早く来る。」
にっこりとガブリエルは笑う。
「私にそんな権限はない。」
2人にウリエルは真顔で言う。
「……優しい兄が3人も居て、私は果報者だ。」
「優しい、ねぇ。」
「そうか。」
ウリエルにガブリエルとラファエルは一瞬だけミカエルを見た。
だが、今は言いたいことも黙っておくことにした。
「そんなことよりも、傷は癒えたのか?」
ミカエルはこの状況を“そんなこと”という。
本人に悪気がないにしても、ガブリエルは気を悪くした。
「傷?」
ラファエルはウリエルを見る。
「今は問題ない。」
ウリエルは答える。
「地上でバラキエルと戦った。」
「あぁ、堕天した裏切り者か。」
「初耳だな。」
「最近の話だ。ムルムルとメルメルも連れて行ったらしい。」
「あぁ、あの煩い雑魚か。」
驚くラファエルにガブリエルは言う。
ムルムルとメルメルの話にはラファエルは興味がない様子だ。
「そこで致命傷を負って、神力を消耗し、還りかけたが……天使に救われた。」
「誰だ?」
「我々の管轄外の天使だ。」
ミカエルにウリエルは答える。
「戦いは暫く離脱する。……下級は兎も角、それ以上の堕天使に敵わない。」
「そこまで弱っているのか。」
ラファエルは驚愕する。
「情けない話だ。」
ウリエルは表情を変えない。
「許せないな。」
ガブリエルは今すぐにでもバラキエルを殺すという雰囲気だ。
「我も、奴を許せない。」
ラファエルも同じようだ。
「奇遇だな。」
そう言うミカエルもやはり同じらしい。
「やめろ。3人共。彼は私が還すべき魂だ。」
ウリエルは牽制した。
この調子で大天使が3人も降りてきて、後でどんな問題が起こるか予測できない。
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