天使は唄う
「だから!イリスは悪くないっていってるのっ!!」
扉を開けると呆れた表情の人物と怒っている少女の姿がある。
「イリス。政務に集中させてくれないか。」
やれやれという顔で書類をする人物がアストライヤーであるとは考えなくても解った。
「だって、我慢ならないわ!」
イリスは地団駄を踏む。
その怒りを象徴するように、髪の毛は赤く燃えるような色をしている。
「イリス。」
唖然とするアポロンと同じくアルテミスも暫く黙っていたが、アストライヤーを不憫に思ったのでイリスを呼んだ。
「どうした?」
アルテミスは優しい口調でイリスを後ろからひょいと抱き上げる。
よしよしと撫でられたイリスは暫く満更でもない表情をしていた。
髪色が太陽のような黄色に変化する。
感情で目と髪色が変わる彼女が司るのは“色”
実際は天使の統率をしている。
子供らしい女神だ。
イリスははたと我に返った。
「もう!子供扱いしないで!!」
再び髪と目の色が変わる。
「はい。」
アルテミスは落ち着いて笑うと傍にあった椅子にイリスを座らせる。
「それで、どうかなさいました?」
目線をイリスに合わせて質問をする。
「ウリエルがイリスを子供扱いするんだもん!頭にくる!だから、あんなのを統率したくないのっ!!」
「それで、アストライヤーのところに……」
アルテミスはアストライヤーを見る。
「現在、天使を統率する女神は地域ごとで振り分けてある。それを変えることはならない。……ウリエルが他の地方の担当になればイリスは彼女の統率をしなくても良い。辛抱しろ。」
「じゃあ、はやくかえてよ!振り分けはアストライヤーがしてるでしょ?」
「彼女には未だやるべきことがある。」
イリスの要望を聞き入れることはなさそうだ。
「それとも」
アストライヤーはアポロンとアルテミスを見る。
「彼女らとかわるか?あそこにはもっと曲者が揃っているぞ。」
「喜んでかわりますわ。」
アポロンは嬉しそうに笑う。
アルテミスはそれに対して苦笑するだけだ。
「やだ。」
イリスは膨れっ面をする。
「ウリエルには私の方から言っておきましょう。」
宥めるようにアルテミスが言う。
納得したのか、イリスは“ふんっ”と膨れっ面をしたままどこかへ行った。
「……大変ですわね。」
「全くだ。」
アストライヤーは具合が悪そうな顔をしている。
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