天使は唄う
「終わりが近いというのに。全く。老人を労らないか。」
そう言いながら書類をしている。
「あら、わたくしより若いくせに何を言ってますか。」
「君は女神だが、おれは天使だ。」
「元、でしょう。今は女神に昇格している。」
アポロンは笑う。
アルテミスは不安そうな表情をする。
「男の癖に、女神という言い方をされると些か不快だな。」
溜め息混じりに言う。
「ここで寿命がある生き物は無い。あるとすれば、神力が尽きた時か神によって転生させられるか。」
アストライヤーは硬い口調で言う。
「本来、女神というものは女の役割だ。女神として天使を統率するには神力を消耗する。」
「知ってますわ。」
アポロンはそう言うとアストライヤーを見る。
「“神は男に剣を、女に揺り籠をお与えになった”……ペネムがそう言ったのを聞きました。」
「私も、聞いた。“男には戦う為の力、女には神による加護を与え、この世が悪しきものに屈さぬように”とも言っていた。」
「そうだ。だから、女神は神による加護……即ち、神力が多い女がやる。天使も本来は男が多い。今は女も珍しくはなくなっているが。」
ペネムとは、天使の中でも一番物知りなことで大天使や女神からも神さえも一目置かれている存在だ。
アストライヤーは書類をする手を止めない。
「男が女神をすると神力が尽きてしまう。その為、本来はそんなことはしない。」
「神は何と?」
「後継を考えるそうだ。」
アルテミスは複雑そうだ。
「それも容易ではない。故に、暫くは大人しくして神力を温存することにする。」
アストライヤーは賢明だ。
「いい男、ですのに。」
「誂うな。」
「あら、つれないひと。」
アポロンはふふっと笑った。
それから暫くして、アルテミスは花畑に立ち尽くしていた。
「アストライヤー……」
喪うことの哀しさなんていつぶりだろう。
女神が死ぬことは初めてではないが、慣れるものでもない。
戦う為の天使とは違い、女神はそこに有り続ける存在だと思っていた。
憂い顔を1人の屈強な男性が見つめる。
「どうした?」
心配そうな彼にアルテミスは顔を上げた。
そこで初めて、自分が俯いていたのかと自覚した。
「オリオン。」
困った顔で見上げて名前を呼んだ。
「そんな風に俯いていては折角の美人が勿体無い。」
「……ありがとう。」
アルテミスはオリオンに微笑む。
「そうだ。」
そう言いながら書類をしている。
「あら、わたくしより若いくせに何を言ってますか。」
「君は女神だが、おれは天使だ。」
「元、でしょう。今は女神に昇格している。」
アポロンは笑う。
アルテミスは不安そうな表情をする。
「男の癖に、女神という言い方をされると些か不快だな。」
溜め息混じりに言う。
「ここで寿命がある生き物は無い。あるとすれば、神力が尽きた時か神によって転生させられるか。」
アストライヤーは硬い口調で言う。
「本来、女神というものは女の役割だ。女神として天使を統率するには神力を消耗する。」
「知ってますわ。」
アポロンはそう言うとアストライヤーを見る。
「“神は男に剣を、女に揺り籠をお与えになった”……ペネムがそう言ったのを聞きました。」
「私も、聞いた。“男には戦う為の力、女には神による加護を与え、この世が悪しきものに屈さぬように”とも言っていた。」
「そうだ。だから、女神は神による加護……即ち、神力が多い女がやる。天使も本来は男が多い。今は女も珍しくはなくなっているが。」
ペネムとは、天使の中でも一番物知りなことで大天使や女神からも神さえも一目置かれている存在だ。
アストライヤーは書類をする手を止めない。
「男が女神をすると神力が尽きてしまう。その為、本来はそんなことはしない。」
「神は何と?」
「後継を考えるそうだ。」
アルテミスは複雑そうだ。
「それも容易ではない。故に、暫くは大人しくして神力を温存することにする。」
アストライヤーは賢明だ。
「いい男、ですのに。」
「誂うな。」
「あら、つれないひと。」
アポロンはふふっと笑った。
それから暫くして、アルテミスは花畑に立ち尽くしていた。
「アストライヤー……」
喪うことの哀しさなんていつぶりだろう。
女神が死ぬことは初めてではないが、慣れるものでもない。
戦う為の天使とは違い、女神はそこに有り続ける存在だと思っていた。
憂い顔を1人の屈強な男性が見つめる。
「どうした?」
心配そうな彼にアルテミスは顔を上げた。
そこで初めて、自分が俯いていたのかと自覚した。
「オリオン。」
困った顔で見上げて名前を呼んだ。
「そんな風に俯いていては折角の美人が勿体無い。」
「……ありがとう。」
アルテミスはオリオンに微笑む。
「そうだ。」