天使は唄う
オリオンは自分の弓を見せる。
「これから狩りに行くんだが、一緒に来ないか?」
狩りとは天界の魂を間引きすることだ。
もう1度神の所へ戻し、転生や天地へと導く。
彼はその為の兵士だ。
天使とは厳密には違うが、位は天使に近い。
「ぜひ。」
アルテミスは微笑む。
それは楽しそうな表情だった。

狩りを終えると2人は談笑する。

いつしか、互いに意気投合して惹かれあうようになった。

それを快く思わないのがアポロンだ。

彼女はある日、アルテミスを呼び出した。
そこはオリオンが狩りをする場所だ。
「アルテミス。今日は、オリオンがここに来ないようですの。」
アポロンは弓を構える。
「ですから、2人で勝負いたしません?」
有無を言わせない表情だ。
「ね?」
ひゅんと矢が飛ぶと遠くに居た魂が送られる。
「何の為に?」
疑問を投げながらも矢を放つ。
「もちろん」
アポロンは再び矢を放つ。
「気まぐれですわ。」
にこやかな笑顔には何かあるように思えた。
アルテミスも負けずに矢を放つ。
「けれど、勝ったら言うことを聞いていただきましょうか。」
アポロンは笑う。
「姉様に勝てる気がしませんけど。」
アルテミスは困っている。
「では、こうしましょうか。」
アポロンは明案だという顔で言う。
「目を閉じて、あの的に当てることができれば貴方の勝ちですわ。」
そう言って遠くを指さした。
的は人型のようだが、何なのかはよくわからない。
「……」
無理そうだと思いながらも、アルテミスは目を閉じる。
「ふふっ」
アポロンは笑う。
アルテミスが射った矢はその的に命中した。
何故なら、その的は此方へ向かっていたのだから。
外すはずはない。
アポロンは確信していた。
その的の所へ行く。
アルテミスも当たったかどうかの確認へ向かう。
「——!!!!」
その的を見てアルテミスは声にならない叫びを上げた。
それは、オリオンだ。
既に魂が消えかかっていた。
「オリオン!!」
アルテミスが触れることも叶わず、彼は消えた。
「ひどい!!!」
アポロンに怒鳴るとアルテミスは神の元へ行った。
「酷いのは、貴方の方ですわよ。アルテミス。……わたくしの、大好きな妹。」
そう呟いた。
彼女も神の所へ行く。

「我が父よ、どうか、オリオンを戻してください!」
そう懇願するアルテミスの姿がある。
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