天使は唄う
生真面目さにアルテミスは苦笑する。
「では。」
ウリエルは少し考える。
「私は男だ。」
考えがちな嘘だ。
真顔で言ってくる。
そして、反応を求めている視線で見てくる。
「……どう見ても女だが。」
ミカエルが間に受けている。
「おい。今しがた冗談を言えと言った癖に間に受けるな。」
「暴言だったか。」
「ウリエルは悪くない。」
「済まないな。冗談は好きだが今ひとつ理解が足らないようだ。」
アルテミスはミカエルに呆れる。
ウリエルは心得たような表情でいる。
「少し解ったかも知れない。」
そう呟くとイリスの所へ行こうとした。
「待て。私も行く。」
「俺も。」
「……」
アルテミスは嫌な予感がした。

イリスの所に行くと2人はウリエルと距離を置いて見守ることにした。
あからさまに不機嫌なイリスと真面目な顔のウリエル。
「役目を果たした。」
「ふん、ご苦労ね!」
イリスは偉そうにしている。
「それともう1つ報告が。」
「世間話なら聞きたくないわ。堅物。」
「私は男だ。」
今ひとつ良くないタイミングで覚えたての冗談を言うウリエルにイリスは面食らっている。
「は、はぁ?」
イリスはこちらを見ている。
アルテミスは頭を抱える。
ミカエルは冗談だと知っているので表情を変えない。
「冗談だ。」
ウリエルは生真面目に言う。
「はぁあ??」
イリスは困惑している。
ウリエルは“言うべきことは言った”という顔で去った。
「何?あれ。」
「何って冗談だ。」
ミカエルは真顔で答える。
「そうじゃないわよ!」
イリスは怒る。
「イリス。怒らないで聞いてくれ。」
アルテミスは機嫌を伺う。
「……」
イリスはむすっとしている。
「ウリエルと君が仲が悪いのを気にしていて」
「アストライヤーが不憫だしな。」
「ミカエル。黙って。」
アルテミスはミカエルを睨む。
「それで、仲良く出来るにはどうすればいいかと考えた結果なのだ。」
「冗談を言えば笑うとでも?」
「……失敗だったが。」
イリスは呆れる。
「あの堅物に冗談を言えと言う方がおかしいわよ。」
そう言うと溜め息を吐く。
「かえってちょうだい。」
イリスがそう言うので2人は去った。
「……ちょっとくらい、あの堅物と仲良くしてあげなくもない。」
去り際にそんな声が聞こえた。

時は過ぎ去り、アルテミスは天使として働く。
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