天使は唄う
アポロンの眠りをひとりの少年が解いたと聞いた。
目覚めたアポロンは天界の深い場所で魂の間引きを行っているらしい。
アルテミスに会うことはない。
「昔は仲良しだったのにね。」
少年がアルテミスに言う。
彼がアポロンを目覚めさせた本人だ。
その代償として、身体を植物が蝕んでいる。
正確には、欠損している身体を植物が補っているのだが。
片目と片腕が植物の天使。
それは異様な光景だ。
「そんな時代もあったな。」
「そうだねぇ〜!」
アルテミスはそんな少年と歩く。
「時の流れとは残酷だ。」
「愛の形もね。」
少年は笑む。
「これから地上に行く用事でしょ?」
「あぁ。」
「楽しそう!」
「遠足じゃないぞ。」
アルテミスは呆れる。
「わかってるよ。」
にっこりと笑って少年は言う。
「愚かなひとを殺すんでしょ?」
放たれる言葉は毒のようだ。
「そうだ。」
それを冷酷に肯定する。
天使は人間を守るもの。
同時に、害をもたらすものを排除する兵士。
彼らは今日も神の命令により舞い降りる。
「さぁ、いっておいで。」
神は白い指で導く。
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