クレソン・スピリッツ
「マリオンお姉ちゃん寝てたんだ。
そうしたら怖いおじさんが二人来て
お姉ちゃんにお注射したんだ」

それ以上、話すことが憚られるといった様子で、子どもは話を切った。
しかしジーナは認めない。

「……続けて」

「ぼく、怖くて物陰に隠れてた。
マリオンお姉ちゃんは、
おじさん達に連れていかれたんだ!」

子どもはそこまで言うと、
突然泣き出した。

「そうか。怖かったよな。
よく話してくれた。偉いぞ」

「ううん。ぼくは、悪い子だ」

「どうして?」

「マリオンお姉ちゃんが、
いなくなればいいって……。
マリオンお姉ちゃんがいなくなれば、
ジーナお姉ちゃんは、
もっとぼくたちを構ってくれると思ったんだ」
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