クレソン・スピリッツ
「北のクーフにある山の中だ」

「……なんてこと」

ジーナは力なくその場に崩れた。
ラッザロが中々言い出せなかった理由がはっきりした。

クーフはガーベラ子爵領の中でも
最北端に位置する山里だ。
グールや狼男、魔獣などが生息し
一般人は立ち入るどころか
近付くことさえも困難な地域なのだ。

「でも、どうしてそんな所に?」

「……俺が調べた情報によれば
この数か月でクーフ山中に
危険生物実験場が稼働を始めたんだ。
ガーベラ子爵の認可が下りているから、
よもやとは思ったが……。
確証はないが、
捉えた人間を拘束しておくには、
これ以上に無い
絶好の環境だと思わないか?」

「否定したいところだけど、
私もそう思う。
逃げ出せば、周りは化物だらけ。
逃げようなんて気にもならないだろうね……」
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