クレソン・スピリッツ
「こんにちは。お兄さんおひとりかしら?」

露出度の高い服を来た女が、
彼に声をかけた。
女は自信に満ち溢れていた。

同乗した他の観光客が、
彼を羨ましそうに眺めている。

「こんにちは、お嬢さん。ええ、一人ですよ」

「あら、やだ。こんないい男が一人旅なんて」

女はニヒルに笑うと、豊かな胸元を押し付けるようにして彼に腕を絡めた。

「よかったら、ご一緒しましょうよ。
私、恋人と別れて傷心旅行中なの」

「そうでしたか。
あなたのような魅力的な女性と別れるとは、
世の中には、贅沢な男もいるものですね」

「やだ、お兄さんったら。
お上手なんだから!」

女は上機嫌だった。
同乗者達は見ていられないといった様子で、目を背けつつ、チラチラと女と彼を覗き見ていた。
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