その傷に契約を、その傷に唇を。
あーちゃんと学校を出て駅前のカフェでお茶をしていて帰る時間がすっかり遅くなってしまった。


昔話に花が咲いて時間がいくらあっても足りないくらいに楽しいひと時だった。


家に着くと玄関に見慣れた男物のスニーカー。


「ただいま」


「和花、おかえり。遅かったわね。蓮くんが来てるわよ」


キッチンから顔を出したお母さんが鼻歌を歌いながらまたキッチンに戻った。


うちのお母さんは蓮のこと大好きだから嬉しいのだろう。


階段を上がって部屋に入ると蓮がわたしのベッドで寝ていた。


「蓮…?」


「…遅かったな」


機嫌が悪そうにボソっと呟く蓮。


「あーちゃんとちょっと寄り道してて。久しぶりだったから話が尽きなくて」


「ふぅん。なぁ、俺がアイツと喋るな関わるなって言ったら…どうする?」


あーちゃんと?せっかく再会できた幼なじみと?


「和花は、俺の言うことに従うんだよな?」


そう綺麗に笑う蓮はわたしに近づき乱暴に唇を重ねる。


何度も何度も、それこそわたしの全てを飲み込むかのように。
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