その傷に契約を、その傷に唇を。
第二章「言えるわけないよな」
あーちゃんは昔っから人懐っこくて友達が多かった。


明るい性格は変わらずで、転校してきてすぐにクラスのムードメーカーとなったあーちゃん。いや、クラスメイト以外のたくさんの人にも囲まれて笑っている。


「おー、おはよう!和花!蓮!」


ーーー俺は会いたくなかったよ


蓮からあんなこと言われても気にした素振りなんて見せずに、教室に入ってきたわたしと蓮を見つけて手をブンブンと振りながら大声を出すあーちゃん。


わたしが小さく手を振りかえすけれど、蓮は無言で自分の席に座る。


「なぁなぁ、和花。次の休み、空いてる?」


あーちゃんが集団から抜け出してわたしの前の席に座りながら尋ねてきた。

「特に予定はないけど…」


「ラッキー!じゃあさ、出かけようぜ。やっぱり街並み全然違うから。案内してよ」


確かに、駅前の再開発によりあーちゃんのいたころよりもこの辺の街並みはガラリと変わってしまった。


「うん。いいよ」


そう頷くとあーちゃんは嬉しそうに笑った。


「じゃあ連絡先交換しよ」


あーちゃんがスマホをこちらに向けたのでわたしも鞄からスマホを取り出し赤外線でお互いの連絡先を交換する。


昔は手紙だったのにな、となんだかおかしくなってクスクスと笑ってしまう。
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