その傷に契約を、その傷に唇を。
放課後になり帰り仕度をしていると廊下の方から可愛らしい声が聞こえた。


「蓮。早くっ、帰ろう!」


菜穂ちゃんが蓮を迎えにわたしたちの教室に来るのはもうみんな見慣れた光景。


いや。ひとりを除いて、だ。


蓮が菜穂ちゃんの元へと向かいふたりして教室を後にした。


その姿に目を丸くして驚いているあーちゃん。


「和花!おい、和花!あれ、誰!?」


「ん?立川菜穂ちゃん。隣のクラスの子で蓮の彼女だよ」


そう説明するとわかってはいるけど自分の心が苦しくなる。


「まじでっ!?蓮の彼女って和花だと思ってた!!」


「えっ!?わたし!?」


そのあーちゃんの発言により今度はわたしが目を丸くして驚く。


「だって蓮、俺が和花に校内案内してもらったときめっちゃ睨んでたし。それに昔っから蓮は和花のことが好きだったし」


「それは…昔の話だよ」


蓮は小さいころはわたしとよく一緒に遊んでたし、よく「好きだ」と言ってくれたけれど。
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