その傷に契約を、その傷に唇を。
だけど、お互いが男女として意識し始めたのは中学に入ってから。


学ランを着た蓮がわたしの知らない人に見えて、蓮も思春期特有の時期で何故かわたしを避けるようになった。


だけどやっぱりわたしに向ける視線は優しいものだったし、今のように冷たく笑う人じゃなかった。


「ふぅん。まぁ俺としては和花がフリーで嬉しいけど」


「ちょっと、あーちゃん!なんでわたしが彼氏なしって決めつけるの?」


「えっ!?彼氏、いるの!?」


「…いません」


そう言うと吹き出しながらゲラゲラ笑うあーちゃん。


「あーちゃんだって、彼女、いるの?」


「…いません」


あーちゃんとふざけていると、なんだか昔に戻ったようで。


心がポカポカ温かくなるけど、蓮がいないことが悲しかった。
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