その傷に契約を、その傷に唇を。
「えっ!?じゃあ、あーちゃん、今一人暮らしなの!?」


「おう。自由気ままな一人暮らし。って言いたいけど、親の住んでるマンションの隣の部屋だけどな」


あーちゃんはこの街を引っ越ししてからすぐにご両親が離婚しおばさんに引き取られた。


そして今年に入りおばさんが再婚して新しくお父さんとなった方の転勤の都合でこの街に戻ってきたのだ。


「新しい父親とも関係は良いけど。やっぱさ、新婚家庭にいるみたいで俺としては気を使うわけ」


「だから一人暮らししてるんだね。なんかあーちゃんが大人に見える」


「どう?惚れた?」


「あーちゃんは昔からモテたじゃない」


現に今だってあーちゃんのこと好きな女の子、絶対いるはず!


「和花にモテたいんだけどなぁ」


からかうような視線をこちらに向けるあーちゃん。


「そんなこと言っても引っかかりません」


あーちゃんと楽しく下校していると、スカートのポケットから小さな振動が伝わった。


画面に表示されている【蓮】という文字。


おかしいな。菜穂ちゃんと一緒に帰るときに連絡をしてくることは滅多にない。


珍しいな、と思いながら通話ボタンをタップする。
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