その傷に契約を、その傷に唇を。
体育部員でもないわたしは全力で走ったって時間がかかってしまう。


バクバクしている心臓をなんとか落ち着かせ、蓮の家のインターフォンを押す。


『はい』


インターフォン越しに聞こえる蓮の声。


「わたし!和花!」


そう名前を呼ぶとガチャリと玄関の扉が開いた。


着替えていないのか制服のままの蓮は無言でわたしの手首を掴み勢いよく引っ張り中に入れた。


「ちょっ、ちょっとバカ!靴、靴脱いでないってば!」



蓮が早急にわたしを引っ張るから靴が片方脱げなくて。


「トロい」


そう言うと自分は勝手に部屋へと戻り、わたしも急いでその後を追った。


部屋に入ると蓮はわたしをベッドに押し倒し優しく何度も何度もキスをする。


こういうとこ、嫌い。


もっと乱暴にしてくれればいいのに。もっと乱雑にしてくれればいいのに。


そうしたら蓮のこと、嫌いになれるのに。
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