その傷に契約を、その傷に唇を。
そのとき、ガラッと扉が開いた。


その先にいたのは部活が終わったあとの蓮で。


「悪い、邪魔したな」


そう言って蓮は振り返り教室を後にする。


いきなりの蓮の登場にわたしを抱きしめている手が緩んだ。


そのすきにおもいっきり身体を突き放した。


「ごめんなさい!わたし、付き合えないです!」


そう頭をおもいっきり下げて蓮のあとを追う。


脚の長さが違うからどんどん蓮が遠くにいってしまう。


「蓮!待って!」


校門を出たところでようやく蓮の姿が視界に入る。


誤解を解かなければ、それだけの一心で周りのことなんて全く目に入ってなくて。


蓮の背中しか見てなくて、車がスピードを出して走っていることに気づかなくて。
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