その傷に契約を、その傷に唇を。
そのあとは断片的なことしか覚えていない。


わたしを庇うように血を出して倒れている蓮の姿。


野次馬の生徒や青い顔をした先生たちが救急車を呼んでいて、


救急隊員によるわたしの治療。


あぁ、わたしも怪我をしているんだ。と他人事のように思っていた。


ねぇ、蓮は?


無事なの?


いやだよ、わたしまだ蓮に告白してないんだよ?


ちゃんと告白させてよ…。


蓮、蓮、蓮…


ごめんね、わたしのせいで。


蓮のおじさんとおばさんがふたり揃って「和花ちゃんが無事で良かった」って泣いてくれた。


何時間経ったか覚えていない。


蓮の手術が終わってわたしは子どものように泣きじゃくった。


「蓮が目を覚ましたら必ず和花ちゃんに連絡を入れるから、お家に帰ってゆっくり休みなさい」


そう蓮のおばさんに言われて、わたしはお母さんに連れられて家路についた。
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