その傷に契約を、その傷に唇を。
「どういう、こと?」


「生活する分には支障はないみたいだ。ただ、バスケで前のようなプレイはできないって」


蓮はバスケットプレイヤーになるのが夢だった。


チームの誰よりも努力をして、チームの誰よりもバスケが好きで。


そんな蓮を見てるのがわたしは大好きだった。


「もうさ、公式戦に出ても前のようなプレイはできないんだって」


「蓮…」


ごめんね、ごめんね、ごめんね。


わたしが蓮から大好きなものを奪ってしまった。


あのとき、わたしが車に注意していればこんなことにはならなかったのに。


「わたしっ!蓮のためならなんでもする!なんでも力になるからっ!」


泣きじゃくりながらそう言うと蓮は優しくわたしを抱き寄せた。


息がかかるほどの近い距離に鼓動が速くなる。


「…なんでも?」


「うん!」


強く頷くと蓮はその綺麗な指にわたしの髪を絡めた。
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