その傷に契約を、その傷に唇を。
「あいつの名前なんか、聞きたくない」


そう言って蓮はわたしを抑えつけたまま、何度も何度も唇を重ねてくる。


力の差なんて歴然としていて、わたしがもがけばもがくほどに蓮は面白そうに笑うんだ。


蓮によって脳内も身体もドロドロに溶かされ、意識が何度も飛んでしまう。


そんなとき、


テーブルの上に置いてあったわたしのスマホが音を立て振動する。


あーちゃんからだ。


きっと待ち合わせ時間を過ぎてるのに来ないわたしを心配して電話をしてくれたんだろう。


蓮はわたしの上に乗りながらスマホを手に取った。


「これ、俺が出たらあいつ不思議に思うだろうな」


「ちょっと何考えてんの!?やめてよ!!」


わたしの制止なんて蓮には全くの無意味で躊躇なく通話ボタンをタップした。
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