その傷に契約を、その傷に唇を。
菜穂ちゃんは可愛らしい笑顔を振りまいてその大きな瞳をこちらに向ける。


「おはよう、菜穂ちゃん」


「おはよう!ねぇ神戸、今日あんた部活に出るの?」


「…気が向いたら」


そう言ってまたダルそうに歩き始める蓮。


蓮は小学校4年生のとき、あーちゃんがいなくなってからバスケを初めて中学、高校とバスケ部に所属している。


今ではただの幽霊部員だけど。


「ごめんね、綾ちゃん。蓮くんに部活、出るように伝えておくから」


「別に菜穂が謝ることないって。でも部長も首を長くして待ってるって伝えておいて」


「うん。わかった!」


菜穂ちゃんは頷くと小走りでまた蓮の後を追いかけた。


そして蓮と自然に手を繋ぐ彼女。


昔は、あの隣はわたしの場所だったのに…。
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