その傷に契約を、その傷に唇を。
先生がまだ来ていない朝の教室。


ガヤガヤとしているクラスメイトたちも先生と先生の後ろについてくる見知らぬ男の子の登場にみんな興味津々。


明るいブラウンの髪にキリッとした眉、堀の深い目元に口角の上がっている明るい笑顔。


そんなかっこいい男の子の登場に女子生徒はザワザワしている。


「おら!お前ら、席に着け。出席とる前に転校生を紹介する」


転校生?


2学期は少し過ぎたとはいえ季節外れの転校生にみんな視線を集中させる。


チラッと窓側の席の蓮を見ると蓮だけは興味なさげに外を見つめていたけど。


「飯島嵐です!小さいときにはこの街に住んでいたのでもし知ってる方がいたら久しぶり!知らない方ははじめまして!まぁ、全部ひっくるめて、よろしくなっ!」


嵐?まさか…まさかっ!!!


おもいっきり立ち上がった勢いに椅子が後ろに倒れる。


「おっ、なんだ?芹沢。飯島のこと知ってるのか?」


「芹沢?…もしかして、和花?」


「…あーちゃん?」


そう呼ぶと昔と変わらない笑顔を向けてくれた。
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