あなたがすき
自分の名前
町田くんは、変わっている。ベースが弾けるからって、ブラバンだけでなく、軽音からも声がかかるのに、昼休みは決まって屋上の温室に来る。私の所属するマイナー中のマイナー部活、園芸同好会に。

どうして来るのか聞いたら、「花は嘘つかないから」と言って笑っていた。

「女の子はいいよね。」

水やりをしながら、不意打ちに言われた。

「そう?」
「だって、植物の名前をつけてもおかしくないから。」

そうか。そうだな。

「森田さんだって、百合っていい名前じゃん。」

どきっとした。正直古くさくて、嫌だったから。

「男はそうもいかない。」
「でも町田くんは、音楽好きだし、いいじゃん、律人って。」

そう言ってみたけど、フォローにならなかった様子。

「百合っていい名前だよ。森田さんも真っ直ぐで、名前通りでさ。」

誉めても何も出ないと返したけど、なんだかすごく嬉かった。それが始まりだった。
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