ありふれた吹奏楽部の物語。
体育館に集まると部員たちは自分の席につき始める。このときも、トランペットのミュートが転がったり、置いた譜面台に楽器が当たり譜面台を倒したり、椅子が一つ足りなかったり、吹奏楽部のセッティングは忙しい。

前列のフルートやクラリネットはさっと座り余裕の表情でパーカッションの運搬を手伝うか迷っている。トランペットやトロンボーンは座席の並び方が決まらずなかなか着席しない。(同じ楽器でも楽譜が3つ程に分かれていて、一番メインとなる楽譜を吹く担当の人が中心になるように座る。)

そんなこんなで、やっと全員が落ち着いたところで、トランペットの1人が自分の楽器を椅子に置き、指揮棒に持ち替えて指揮台に立った。

すると、先ほどまで「緊張する」「この部分ミスるかも」「新入生キラキラしてる」などと口々に話し合っていた部員の表情が引き締まり、
全員姿勢を正して指揮者を注目する。

指揮者が指揮棒をさっと掲げると、全員が同時に楽器を構える。

音楽が始まる瞬間だ。

ありふれた吹奏楽部の物語が始まる。
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