ありふれた吹奏楽部の物語。
アルヴァマー序曲の演奏が始まった。
親と合格の喜びを分かち合ったり、これから始まる高校生活について話し合っていた新入生たちは、はっとして聴き入る。

話し声で充満していた体育館中が音楽で満たされていく。体育館はやけに響きが良く、ひとりひとりの楽器から発せられる音が幾重にも重なり、舞台から天井の一番高いところまで広がっていく。

賑やかな部分から落ち着いた旋律。
自然と体が動き出すクラリネット。
少しほっとした表情のトランペット。
和音を重ねるトロンボーン。
一人一人の音楽が、一パート一パートの音楽、そして全員の音楽へと調和していく喜びと感動は、吹奏楽部員だけが手にすることのできる幸福である。

演奏はクライマックスを迎え、会場が拍手で包まれる。

指揮者の合図で全員が一斉に立ち上がり満足そうな表情で会場を見渡す。

吹奏楽部の本番はざっとこんな感じだ。
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