ありふれた吹奏楽部の物語。
4月 出会い
新1年生が入学して2週間が経った頃、
仮入部が始まった。

授業が終わり、音楽室に集まりだした吹奏楽部員はいつにも増して慌ただしい。
楽器倉庫からありったけの楽器を引っ張り出してきては綺麗に拭いて並べていた。

「あの、すみません…。」
不安そうな声でみやび達に話しかけてきたのは新入生だった。早速の仮入部員の登場に一同ははしゃぎだす。

「この楽器吹きたくて…。」

「初心者ですか!経験者ですか!」
みやびはニヤニヤしながら答える。

「あの、初心者で…。音楽やったこともないです。できるか不安なんですけど、体育館で聴いた演奏が素敵で、私もやってみたいなー...って。」

自分たちの演奏に感動して仲間が増えるということは吹奏楽をする上の大きな喜びの一つである。みやびはじーんときながらにやけが止まらない。

「嬉しすぎます!じゃあ早速吹こうか!どの楽器がいい?」

「この楽器、トランペットがいいです。」

みやびは自分の楽器を選ばれてさらに嬉しさが止まらない。まだ彼女が入部すると決まったわけではないが、初めての後輩を前に胸がドキドキしていた。

「こうやって、この吹くところ、マウスピースっていうんだけどこれにふー!!って息を入れてさ!ほら!」

「ふー…。」

.....


音は鳴らない。
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