何でも屋と偽りのお姫様～真実の愛を教えて～
「だ……大丈夫です……」



たった一言を絞り出すのにどれだけ時間が掛かっただろうか。
トクントクンと騒ぎ立てる心臓が思考回路を阻んで上手く言葉が出せない。



「ワリィな！急に飛び出して……。
怪我はねぇか……？」



男の人の声は私にしっかりと届いている。
しかし私は答えることが出来なかった。


その理由は明確だ。
私の今の体勢が原因だってことはすぐに分かる。


男の人の手が私の腰に当てられ、私はそれに体を預ける様に反り返っている。
まるでダンスのワンシーンを切り抜いたかのような場面だ。



「おーい？大丈夫かよ？」



軽く揺すられ私は正気へと戻って行く。



「だ……大丈夫です……」

「本当に大丈夫かよ！？
そのセリフ2回目だぞ？」


ゲラゲラと面白そうに笑うと男の人はゆっくりと私を起こしてくれる。

真っ直ぐに立てば彼との身長さが歴然となった。



「ちっさ……」



その言葉に私は思わず眉を顰めた。


私は決して小さくはない。
158cmと中途半端ではあるが女子の方ではまぁまぁな方だ。


それを小さいというこの男は軽く180を超えていることが分かる。
拓哉さんと同じくらいの身長だから190近くはあるだろう。
< 11 / 430 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop