何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「梓沙コイツはな……お前の事が……」

「やめろ」

「うぇ!?
テメェなっ……いきなり殴るんじゃねぇよ!」



いったい何が起きたのだろうか。


遥斗が何かを言おうとした瞬間、それを遮る様にレイヤは遥斗の鳩尾に拳を突き出した。
痛そうに顔を歪める遥斗と何故か顔を紅めるレイヤ。
アンバランスな2人を交互に見ながら首を傾げる私。



「お前が悪い」

「ったく……それより答えを聞かせて貰おうか?
桐生 零夜くん?」

「分かっていて聞くのか?
お前は性格が悪いな」

「それはどうも」



レイヤと遥斗の反応は正反対だった。


レイヤは不機嫌そうに。
遥斗は楽しそうに。


異様な光景が繰り広げられている。



「……分かった。
何でも屋に入る」

「よろしい」



不敵な笑みを浮かべながら手を差し出す遥斗。
レイヤはその手を嫌々に掴んでいた。



「え!?」



いきなりの展開についていけていないのは私だけの様だ。


何故2人が握手をしているのかとか
レイヤが何でも屋に入るとか


訳の分からない事ばかりだ。


でも……。
嬉しいかも。


だってレイヤとこれから一緒にいられるって事だから。
レイヤが何でも屋にいれば私は遥斗に呼び出される度に彼に会えるという事だ。


こんなラッキーは他にない。


よく分からないが私は2人の腕に抱き着いた。



「本当にガキだなお前は」

「梓沙、そいつに触れるな」



私の右側に遥斗、左側にレイヤ。
まるで親子みたいに手を繋ぐ。


正確には腕を組んでいるんだけど。
まぁ、そんな事はどうでもいいか。


そう思いながら両サイドから感じる温もりに目を瞑った。
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