何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「お前が幸せだとは思えねぇんだよ」

「……貴方に何が分かるんですか?
私の事……何も知らないくせに……!!」



私は男の人を睨みつけながら声を押し殺す様に呟いた。

どんなに睨みつけたって男は私から目を逸らそうとはしなかった。
黙ったまま、ただ私の話を聞いていた。



「私は幸せです。
大好きな人と一緒にいられるし、お金には不自由しないし……」



口を開く度に目の奥が熱くなっていくのが分かる。
それでも話すことを止めないのは認めたくないからだ。


自分が……。



「……仕事だってやりがいがある……」



幸せじゃないって事を……。



「……ばーか。
幸せな奴がこんな顔して泣く訳ねぇだろ?」



顎に添えられていたはずの手がいつの間にか私の頬へと移動していた。
そして優しく撫でられる。
彼の手が僅かに濡れているのが分かった。


“涙”


それを流したのはいつ以来だろうか……。
自分の感情をも捨てた私にとって久しぶりに感じる胸の痛みはどこまでも深く広がっていった。
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