何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「ちげぇよ。
お前みたいないい女にあんな男は似合わねぇんだよ」



耳元で囁かれたその言葉は、私の胸をじわりと温めていく。



「何言って……」

「何って本当の事だ」



嘘や冗談を言っている雰囲気は全くない。
からかっている感じでもない。
遥斗は心からそう思ってくれているのだ。
そう思ったら、笑顔を浮かべずにはいられなかった。


他の人にどう思われたっていい。
この人が、私の事をちゃんと見ていてくれればそれでいい。


さっきまで抱きしめられている事が恥ずかしかったのに、今は凄く心が安らいでいた。


本当にこの人は不思議な人だ。


基本、子供っぽくてムカつくのに……。
それでも一緒にいたいと思わせる魅力がある。


何より、優しい人なのだ。
今日だってレイヤを休ませたのはヨウコさんと鉢合わせしない様にと遥斗は考えたのだろう。


失恋したヨウコさんを気を遣うのは勿論、レイヤが責任感を感じない様に……。
そこまで周りを思える人は他にいるだろうか……。


何処までも優しい彼に抱きしめられながら私はそっと目を瞑る。


いつまでもこんな平和な時間が続けばいいのにと、何故そんな願いをしたのかは分からない。
ただ遥斗といると、心が温かくなって幸せな気持ちになる。


でも……それと同時に凄く怖くなる。


だからどうか、穏やかな時間が続きます様に。
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