何でも屋と偽りのお姫様～真実の愛を教えて～
「分かった。
話しがそれだけなら俺たちは行く」

「待ちなさい、梓沙さん」

「は……はい」



お義母様は私の方に視線を向けると口角を上げただけの笑顔を私に見せてゆっくりと口を開いた。
冷たいその声に肩がピクリと揺れる。



「貴方は見てくれだけはお金持ちのお嬢さんとは変わらないわ。
だから余計な感情は捨てて、拓哉の隣で笑っていなさい」



その言葉に反応したのは私ではなく拓哉さんだった。



「梓沙を侮辱するような事を言うな」

「あら？
私は褒めているのよ」

「嫌味にしか聞こえない」



本当に親子なのだろうか、そう疑ってしまうくらい冷たい会話だった。
そんな会話を聞いていたくなくて、私は拓哉さんの袖の裾を軽く掴む。



「大丈夫ですよ、拓哉さん」

「梓沙……」



私は拓哉さんに張り付けただけの笑顔を見せる。
その顔をキープしたままお義母様の方を向く。



「私がやるべき事は分かっています。
ですのでご安心ください」

「……ならいいのよ」

「……行くぞ梓沙」

「はい。それでは失礼します」



お義母様とお義父様に頭を下げて拓哉さんの後を追いかけた。
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