何でも屋と偽りのお姫様～真実の愛を教えて～
「……何で抵抗しなかった？」

「え……？」

「あの男にベッドに押し倒されて、何で抵抗しなかったんだよ……！！」



遥斗の声はどこか震えていて今にも消えてしまいそうなものだった。
そんな遥斗に嘘をつくことは出来ず正直に全てを話した。


廊下で社長とぶつかった事も、お義母様とのやり取りも。



「私には……抵抗なんてする資格はないんだ……。
あの人に逆らえば、拓哉さんに迷惑が掛かるから」



だから、あのまま社長にどうにかされたって文句も言えない。
寧ろ、それが私の義務なのかもしれない。


だって私は……。



「それに……それが操り人形の仕事だもん！」



明るい声を出して笑顔を浮かべる。
それはまるで遥斗と出会う前の自分に戻った様な気がした。


作り笑顔ばかり浮かべていたあの時に……。


少しずつ私の心が消えてなくなっていく。
遥斗と出逢って取り戻した温かい気持ちが冷たくなっていく。



「ふざけんじゃ……ねぇよ！！」



パチンと乾いた音が部屋へと響き渡った。
それと同時に左頬がジンジンと熱くなる。



「遥斗……？」



痛む左頬を押さえながら遥斗を見つめる。

その瞬間、胸がズキンと悲鳴を上げた。



何で……？
なんでそんなに辛そうな顔をしているの？


叩かれたのは私なのに、遥斗の方が何倍も哀しそうに見えた。
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