何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「梓沙!!」



遥斗と抱き合っていればドタドタと足音が聞こえてきた。
この声は……。
聞き慣れた声に私は顔を緩めた。



「レイヤ!」



遥斗に抱き着いたまま顔だけを横に向けて声が聞こえた方を向く。
そこにいたのは額に汗を浮かべたレイヤだ。



「無事なのか?」

「うん、遥斗のお蔭で何とか」

「そうか……よかった……」



安心したせいかレイヤはその場で座り込んでしまった。
驚いた私はレイヤの元へ行こうとするが、背中にガッシリと回された腕が私を離そうとはしなかった。



「遥斗?」

「いいから、ココにいろ」

「で……でもレイヤが……」

「アイツなら大丈夫だ」



“大丈夫だ”そう言いきられてしまったら断る訳にもいかない。
私はレイヤの方を見つめながらも『うん』と小さく頷いた。



「ってか2人ともどうやって部屋に入ってきたのよ!?
オートロックだし開かないはずなのに……」

「危ない目に合ったというのに……そこを気にするか普通……」

「ったく、本当に変だなお前は」



呆れた様なレイヤの声に遥斗は思い切り同意していた。



「気になるんだから仕方がないでしょ!?」



そう言えば『馬鹿か』と憐れんだように言われた。
しかも綺麗に声を揃えて……。


軽く落ち込んでいれば、さらっととんでもない会話が耳に入ってくる。



「ドアを壊した」

「……なるほど、だから簡単に開いたのか」



遥斗の言葉に納得した様にレイヤは頷いていた。
< 182 / 430 >

この作品をシェア

pagetop