何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「おいっ……桐生助けろ!!」

「お……俺、帰ります」



レイヤは自分の荷物を持つと焦った様にオフィスを出て行った。



「待てよ!馬鹿か……。
こんな状況で2人にすんじゃねぇよ……」


慌てた顔をしながら遥斗は扉を見つめていた。
なによ、そんなに私と2人になるのが嫌なの?
遥斗の焦った顔を見ていると哀しくなってくる。



「梓沙……?」

「……」



さっきまでの怒りは綺麗に消えて代わりに哀しさでいっぱいになる。
自分の意思とは関係なく目の奥が熱くなってくる。
遥斗に嫌われているんじゃないかそう思うだけで胸が苦しくなる。
どうしたのかな私……。
心に問いかけても分かる訳なく、ただ沈黙だけが流れていく。



「おい梓沙……って……どうして泣いてんだよ!?」

「泣いてないもん」

「そんな泣きそうな顔して何言ってんだよ!」



遥斗は私からズボンを奪いそれをソファーに投げつけると力いっぱい抱きしめてきた。
さっきまで避けられていたのが嘘かの様な距離に胸がトクンと音を立てた。



「なによ……さっきは来るなって言ったくせに」

「あ……あれは……お前がこんな恰好で近づいてくるからだろーが!」

「でも今は近いじゃん、恰好は変わってないよ」

「はぁ!?それはお前が泣きそうになってるからだろ……?
屁理屈ばっかり言ってんじゃねぇよ」



遥斗は呆れた様にタメ息をついた。
でも私を抱きしめる腕の力は凄く優しかった。
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