何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「俺は……お前の優しさに甘えて酷い事をしちまった」

「そんな事ない!!
私が自分で決めた事だもん!」



遥斗の背中は小刻みに震えていた。
哀しいのか、悔しいのか、怖いのか……。
遥斗が今何を思っているかは分からない。


でも私は……こんな遥斗を見たくて昨日の決断をした訳じゃない。



「私は後悔なんてしてない!」

「俺はしてるんだよ!!」



遥斗の怒鳴り声がリビングへと落とされる。


“後悔している”
その言葉を聞いた瞬間、私は何も言えなくなってしまった。


遥斗が今……
何を思っているのか、何を考えているのか分からない。


昨日はあんなに近くにいたのに……。
手を伸ばせばすぐに触れられたのに……。


今は遥斗が遠く感じる。


どんなに手を伸ばしても、指先すら届かない。



ねぇ遥斗……。
昨日の私たちの行為は何だったの?


無駄なモノだったの?


私はただ……貴方の笑顔が見たかっただけなのに……。


貴方の震えた、悲しみに満ちた後姿を見たい訳じゃなかったのに……。



悔しさと哀しさが交じり合った感情が私を支配していく。



私じゃあ……私なんかじゃ……。
貴方の哀しみを拭えないんだね……。
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