何でも屋と偽りのお姫様～真実の愛を教えて～
階段を下りていれば見慣れた顔が目に映る。
散々泣いて、腫れた目を見られたくなくて引き返そうとするが足が動かなくなる。



「梓沙……？」

「……レイヤ……」



私は後ろを向いているから顔は見えていないはずなのに、レイヤは何かを察した様に近寄ってくる。
来ないで、そう願うが虚しくレイヤは私の腕を掴んだ。
無理やり振り向かされパチリとレイヤと目が合う。


あっ……怒ってる。
レイヤの顔を見た瞬間に分かった。
だって、目が凄いことになっているんだもん。


普段お世辞でも温厚とは言えないが、今のレイヤの目は異常だ。
目だけで人を気絶させてしまうのではないだろうか。


ぼんやりとそんな事を考えていれば低い声が私を貫いた。



「何があった？」



それは勿論、レイヤが私に向けているものだ。
分かっているが、何も答えることが出来なかった。



「……」



黙り込む私から視線を逸らすとレイヤは上の階、遥斗の家がある方を鋭く睨みつけた。
そして、ゆっくりと私の横を通り過ぎていく。


「れ……レイヤ」

「離せ梓沙」



反射的にレイヤの手を掴み彼の動きを封じる。
だって明らかに遥斗の家に怒鳴りこみに行こうとしているもん。


焦った顔をする私とは対称的に怒りに満ちたレイヤの顔。


何とかして止めなければ、そう思うがいい案は思いつかない。


でもだからと言ってレイヤを遥斗の所に行かせる訳にもいかない。
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