何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「……辛くなったら言え」

「レイヤ……」



そう言ってレイヤは私の手を離すと何でも屋の事務所へと消えて行った。


何も聞かないでくれるのはレイヤなりの優しさだろう。
いつだってレイヤは優しい。


突然いなくなった私をずっと探してくれたり、私の事を想って怒ったり……。
無表情だし冷たいし……何を考えているかさっぱり分からないけど……。
それでも私の事を心配してくれているレイヤ。
そんな彼に嘘はつきたくない。
でも……。
遥斗との事だけは知られたくなかった。


あの2人がこんな事で仲が悪くなるのは嫌だし……。
何より巻き込みたくないんだ。


“偽装恋人”という遥斗と私の関係に、レイヤを巻き込みたくない。
だからこの問題は私と遥斗が2人で解決しなければいけないんだ。



……帰ろう。
今はとにかく帰らなければいけない。



「……拓哉さん……怒っているかな……?」



不安を胸に抱えながら私は歩き出した。
婚約者の元へと……。
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