何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「やっぱり起きていたか」

「……ごめんなさい」



呆れた様にタメ息をつくと拓哉さんはベッドへと上がってくる。
そして私の体を起こし、座りながら抱きしめてきた。



「拓哉さ……ん?」

「……」



何も喋ろうとはせず、ただ強く私の体を抱きしめてくれる。
この状況が理解できない。


拓哉さんは怒ってないのだろうか?


甘い考えが頭に浮かんだがすぐにそれを振り払った。
そんな訳ない。


嫉妬深くて束縛気味な彼が無断外泊なんて許すはずないのに……。
何でこんなに優しいのだろうか……。


少し警戒をしながら私は拓哉さんの顔を見上げる。



「あの……怒ってないんですか……?」

「怒っているに決まっているだろう?」



即答され、私はキョトンとしてしまう。
確かに彼の顔は怖いことになっているし、怒っていることに間違いはなさそうだ。


でも、だったら何故こんなに優しいの?
首を傾げながら恐る恐る口を開く。



「じゃあ何で優しくしてくれるんですか……?」



そう言えば拓哉さんは不思議そうな顔をした。
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