何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「あの……お義母様……」

「梓沙さん、何も心配する事はないわ。
これが貴方の仕事ですものね」



口角を引き上げただけの笑みを向けられ、ゾクリと背筋が凍る。


お義母様の言葉で全てが分かってしまった。


まず、お義母様は拓哉さんにこの前の事を言っていない。
つまり、私はお義母様に仕事を言いつけられてパーティーを抜け出したことになっているのだ。


だから拓哉さんは私には怒っていない。
……と言う事だ。


やっと状況が把握できた。


それと同時に胸が苦しくなる。


結局私は利用されているだけだ。
お義母様に良いように操られている。


私だけじゃない。
拓哉さんもだ……。



「ふざけるな。
今後、梓沙に仕事を押し付けるんじゃない」

「それは約束できないわね。
梓沙さんは優秀だから」



その言葉に虫唾が走った。

お義母様は私があの社長と体の関係を持っていると思っているのだろう。
実際は違うが……。


だからお母さんの言う“優秀”は男を誑かすという意味でのものだろう。



「いいからもう出て行け」

「分かっているわ、こんな所にいるだけ時間の無駄ですもの」



そう言いながらお義母様は執事を引き連れ何処かへ行ってしまう。
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