何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「お金がある人間はない人間を見下しているんでしょう!?」

「……私にはお金持ちの全ての人間の気持ちが分かる訳ではありません。
でも……拓哉さんはそんな人間じゃない!」



拓哉さんの事を何も知らないくせに……。
好き勝手に言わないで……。


拓哉さんはずっと1人で闘ってきたんだ。
孤独という闇の中でずっと……。




『会社の人間も、俺の周りの人間も……。
全員がそう思っている事は知っている。
冷血、非情、心がない……影でそう言われている』

『だが、俺は自分のやり方が間違っているとは思わない。
生温い経営をすればいつか必ずつけが回ってくる。
だからこそ……厳しく社員たちにも接している』



いつだったか拓哉さんが言った言葉だ。


拓哉さんは自分が陰でどう言われているか分かった上で冷たく社員に接しているんだ。
会社の為に……。


でも、彼は本当は優しい人だから……。
分かりにくいかもしれないけど……優しいから……。


努力している人はちゃんと認めてくれる人だ。
誰よりも厳しくて誰よりも温かい人。


それが……。


柊 拓哉という人なんだ……。



「何よ……何なのよ……!」

「社長なんてお金持ちって意外に何もないじゃない!
冷たいし怖いし!」

「貴方たちは……何も分かってない……」



小さく呟くと私はスカートを払いながら立ち上がる。
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