何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「……あっ……」



やっとの思いで出た言葉は悲鳴じみたものだった。


ツーッと冷たい感触が私の頬へと流れ落ちる。


“涙”


そう理解するのに少し時間が掛かった。
それは凄く長くて辛いものだった……。




「はる……と……」



掠れた声は街の喧騒へと消えていく。


だけど私の耳には遥斗たちの声しか入ってこなかった。



「ついて来るなって言ってるだろーが!」

「そう言う訳にもいかないでしょ!?
ハルさんの事が心配なんだから!」

「うるせぇよ、余計なお世話だ」



遥斗は邪険にあしらっているみたいだけど……。
2人はどっからどう見てもお似合いだった。


2人とも背が高くて美形で……。
まさに美男美女で歩いているだけで絵になっている。



「もう待っててばハルさん!」



無視していく遥斗を追いかけていく女性。
小さくなる2つの背中を私はただ黙って見つめていた。
< 232 / 430 >

この作品をシェア

pagetop