何でも屋と偽りのお姫様～真実の愛を教えて～
「……それはどういう意味だ」

「どういうって……まぁ今はビジネスパートナーとしてだな」



『コイツが望むならプライベートのパートナも歓迎だけど』
軽口で言いながら五十嵐さんは笑みを浮かべた。



「ビジネスパートナー……？」

「おー申し遅れました……。
……って名刺出すの面倒くせぇ、これ借りるぞ」



そう言いながら私の手から名刺を抜き取った五十嵐さんはそれを拓哉さんへと差し出す。
拓哉さんは受け取りながら目を向けていた。


そして“ふっ”と馬鹿にするような笑いが落とされる。



「偉そうな事を言っていたから何者かと思ったら……。
何でも屋……？笑わせるな」

「別に笑わせてねぇけどな」

「こんなふざけた場所にコイツはやらん」



そう言って拓哉さんは私の腕を引っ張り自分の方へと引き寄せる。


その時に私と五十嵐さんの手は離れていく。
たったそれだけの事なのに私の胸は締め付けられるような感覚に見舞われていた。



「おいおい……。
ソイツの意見も聞かずに断るんじゃねぇよ」



呆れた様な五十嵐さんの声が拓哉さんに向けられる。
でも拓哉さんはと言うと五十嵐さんの方を見ることなく私を見下ろしていた。



「コイツの意見は俺と同じだ。
俺以外の世界は梓沙には必要ない。
そう……だろう……？」



有無を言わせない問いに私は目を伏せる。
そして小さく頷いた。
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