何でも屋と偽りのお姫様～真実の愛を教えて～

お仕置き

「乗れ」

「……はい」



パーティー会場を出た私たちの目の前に見慣れた黒い車があった。
拓哉さんの家の執事が運転をしてくれている車に私を押し込むと拓哉さんも乗り込んでくる。



「家へ戻る」

「かしこまりました」



短いやり取りを横目で見ながら私は小さくタメ息をつく。
またあそこへ帰るのか……。
憂鬱な気分になるのが自分でも分かる。
私と拓哉さんは同棲を初めてもう4年近くになる。
だけど未だに慣れないんだよな……。


そうこう考えているうちに家に着いたみたいだ。
車を降りればまるでお城みたいな建物が目に映る。



「行くぞ」

「……はい」



私に背を向けスタスタと歩いて行ってしまう拓哉さん。
私もその後を追いかけていく。



「お帰りなさいませ、拓哉様、梓沙様」



大きな扉の前に行けば自動で扉が開く。
その中には沢山の執事さんやメイドさんがいた。


拓哉さんは柊財閥のご子息だ。
拓哉さんのお兄さんがグループを引き継いでいる。
でも、柊財閥の人間には変わりない。
そんな人の恋人が……私なんかでいいのだろうか。
私は普通の一般家庭に生まれ育ってきた。
だからか拓哉さんにとっての当たり前が私にとっては信じられないのだ。


この大きな家も、あの運転手つきの車も。
執事やメイドやお手伝いさんがいる事も……。


全てが受け入れ難いんだ。