何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「言わなくても分かってるさ。
お前の気持ちなんて全部な……」

「っ……!」



遥斗の言葉を聞いた私は気が付けば彼を押し飛ばしていた。


驚いた顔の遥斗が目に映る。
罪悪感が募るが私は自分を抑えれなくなっていた。


ギリギリと痛む胸が、熱くなる目の奥が……。
私の気持ちを爆発させる。



「遥斗に私の気持ちなんて分かる訳ない!」

「梓沙……?」

「私があの時、どんな気持ちで遥斗の部屋を出て行ったと思う?
私がどれだけ貴方の事を想っていたのかなんて……遥斗は知らないでしょう!?」

「梓沙、落着けっ……」



私の手を掴み抱き寄せようとする遥斗を必死に拒絶する。



「彼女がいるのに優しくなんかしないでよ!
“偽装恋人”なんて訳の分からない事に巻き込んで私の気持ちを弄ばないでよっ……」



こんな事が言いたかった訳じゃない。

私は遥斗に自分の気持ちを伝えたかっただけだ。


なのに……。
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