何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「貴方なんか大嫌いよ……!」



心にもない事を言ってしまう。
嫌いなんかじゃない。
大好きなのに……。


気持ちが抑えきれなくなった私の頬に涙が零れ落ちていく。



「自分勝手で自己中な遥斗なんて大きら……っ……!!」



私の言葉は宙へと消えていった。
天邪鬼な私の唇を遥斗は優しく自分の唇で塞いだ。



「っ……何するのよっ……」

「うるせぇ唇を塞いだけだ」



ゆっくりと離れていく唇を見つめながら私は力なく言葉を放つ。



「何でこんな事するのよ……」



煩いからってキスなんてしなくていいじゃない。
彼女がいるのに、そんなことするなんて……。


溢れ出す涙を手で拭おうとすれば、私の手は空を掴んだだけだった。
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