何でも屋と偽りのお姫様～真実の愛を教えて～

「……飯でも食いに行こうぜ……痛ッ！？」



遥斗が言えばカオルさんはワザとらしくタメ息をついた。
そして、長い脚は遥斗の脛を思いっきり蹴りあげていた。


私の時とは違い容赦ないその攻撃に苦笑いを浮かべる。
カオルさんって、遥斗には遠慮なしだな……。
痛みに顔を歪める遥斗を隣で宥めながらカオルさんを見る。



「ハルさんって馬鹿？
せっかくのクリスマスを何で4人で過ごす訳？」

「あっ……」



カオルさんの言葉に遥斗は何故か私に視線を向けてきた。
どうしたのだろうか、首を傾げる私に遥斗は顔を紅く染めながら呟いた。



「……2人で行くか」

「え……でも……」



カオルさんとレイヤに顔を向ければ2人は既に私たちに背を向けていた。
徐々に遠くなる2人の背中と私の隣にいる遥斗の顔を交互に見ながら戸惑っていれば右手が温もりに包まれた。



「気を遣ってくれたんだよ、アイツらは」

「何で？4人でご飯に行けばよくない？」

「ったく……。
久しぶりに会えたんだ、お前を独り占めさせろよ」

「っ……4人でご飯行こうって言ったのは遥斗じゃない」



肩を抱き寄せられ密着する体。
恥ずかしさを紛らわす様に口を尖らせばポンッと頭を叩かれる。



「こういうの慣れてねぇんだよ」

「なんか意外だね」

「うっせぇ、ってかさっきから思ってたんだけどよ」

「ん？」

「髪の毛グシャグシャ」

「あっ……」



すっかり忘れていた。
全力ダッシュをした挙句、レイヤに髪を撫でまわされたのだった。


こんな髪型で久しぶりに遥斗と会ったなんて……。
恥ずかしくて俯けば、遥斗は優しく私の頭を撫でてくれる。



「まぁ、どんなお前も好きだけどな」

「っ……」



キザな台詞を吐きながらも遥斗は私の髪を手で梳いてくれた。
その手つきは優しくて、懐かしかった。
前もこうやって髪を直してもらったっけ……。


ふと遥斗を見れば顔を紅く染めていた。
私と同じ事を思っているのかな？
そう考えるだけで幸せでいっぱいになる。