何でも屋と偽りのお姫様～真実の愛を教えて～
「遅くなって悪かった。
本当なら……もっと早くお前を連れ去るべきだったのに」



遥斗は哀しそうに私の髪を撫でると、ちゅっと髪にキスを落とす。
その仕草が凄くくすぐったかった。
いつもの遥斗からは想像できないくらい甘い行動。
私の胸はもう爆発寸前だ。



「ううん。
ありがとう、私を迎えに来てくれて」

「……俺が直接行けたらよかったんだけどよ」

「私の為でしょ？全部分かってるから大丈夫」



私が笑えば遥斗は安堵のタメ息をついていた。
『お前には敵わねぇな』と優しく微笑みながら。


遥斗は頭がいいから、何歩先の事まで考える人だ。
引っ越したのだって、自分が迎えに来なかったのだって……。
拓哉さんが私を簡単には見つけられない様に細工してくれたのだ。


遥斗の優しさはいつだって変わらない。
温かくて大きな愛情が溢れ出てるんだ……。



「……遥斗……私……」



このまま遥斗と一緒にいたい。


だけど今のままじゃ駄目だ。
私はただ逃げて来ただけなのだから。
自分の手でケリをつけなければいけない。


拓哉さんにちゃんとお別れを言わなきゃ。
そう思い遥斗を見上げれば見透かしたように何かを差し出した。


見覚えのあるそれは……。
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